2009年2月1日「思いがけない呼びかけ」渡辺敏雄牧師

聖書箇所:ルカによる福音書19章1~10節
5、イエスはその場所に来ると、上を見上げて言われた。「ザアカイ、急いで降りてきなさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい。」
6、ザアカイは急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。
7、これを見た人たちは皆つぶやいた。「あの人は罪深い男のところに行って宿をとった。」
8、しかし、ザアカイは立ち上がって、主に言った。「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたなら、それ を四倍にして返します。」

説教要旨
徴税人の頭ザアカイがイエス・キリストと出会う物語です。
当時徴税人はユダヤ人同胞から非常に嫌われていました。単に嫌われていただけでなく罪人 みなされていました。なぜか。それはローマ帝国の支配の下、税金を収奪し、不正な取り立てをしていたからです。
そんな社会から疎外されたザアカイ はイエスを一目見ようとしますが、背が低いため群衆に遮られて見ることができません。そこでイチジク桑の木に登りイエスを見ようとするのです。

見るだけで十分であったのですが、主イエスの方から思いがけなく呼びかけがなされたのです。それもザアカイという名前をもって呼びかけられたので す。ここに神は群衆という塊で私たちを見ているのではなく、ひとりびとりを区別して見ているということが分かります。またその区別が番号でもってなされる のではなく、固有の名前をもってなされているということは、神は私たちひとりびとりをかけがえのない者としてご覧になっておられるということです。

さらに主イエスは「ぜひあなたの家に泊まりたい」(5節)と言われます。世間からのけ者にされていたザアカイにとって、これは青天の霹靂であったこ とでしょう。この主イエスの御声でザアカイの回復が図られていきます。社会から失われ1いたザアカイは今主の御声によって社会へと連れ戻されるのです。
ザアカイはその突然訪れた神の大いなる恵みに応答し、「主よ、わたしは財産の半分を貧しい人々に施します。また、だれかから何かだまし取っていたら、それ を4倍にして返します」(8節)とまで申し出るのです。収奪する者から施す者へとザアカイは転換したのです。

イエスとの出会いはこのような大きな転換を引き起こしていきます。ここで注目することは、ザアカイの申し出があったから、主イエスはザアカイの家に 泊まるということをされたのではないということです。
まず神の大きな恵みがあり、それを受けてザアカイの申し出があったということです。圧倒せる 恵みにザアカイは人生の大転換をしたのです。この大転換(収奪する者から施す者へ)は、神が求める人間の本来的な生き方(愛し合い、助け合う生き方)への 立ち返りであります。このようにして失われた者が回復されるのです。